日光の篠田さん、86歳で資格取得 妻介護のため一念発起 /栃木
日光市久次良町の篠田文夫さん(86)が、ヘルパー2級の資格を取得した。市内の特別養護老人ホームに入所している妻宮子さん(80)の介護のために挑戦した。「暖かくなったら昼間、自宅で一緒に過ごすことができれば」と話している。全国ホームヘルパー協議会(東京都千代田区)によると、家族介護のため70歳代が取得したケースはあるが、「80歳代はかなり珍しい」という。
宮子さんは4年半前に脳梗塞(こうそく)で倒れて入院、その後特養に移った。要介護度は3。入院時に自宅介護を決意し一昨年、看護助手の資格を取得した。しかし、医者から「老老介護は無理だ」と説得され断念。それでは「週1回ぐらい自宅で過ごさせたい」と一念発起。昨年、市のヘルパー講座受講生募集に応募した。
主要なテキストは介護実技マニュアルなど計4冊、合計約900ページ。ほかに介護保険の法令解説の副読本なども読みこなし、入浴実習や施設で実地研修を含めて計130時間の講習をクリア。計7回の試験にも1回で合格して先月、修了証が届いた。
一緒に受講した「同期」は孫の年齢。その応援が支えとなり「何とかなった」。募集対象は16歳以上。「自分が不合格となって、年齢制限をつけられたら申し訳ない」と思い、「ない頭を絞って」見事突破した。
篠田さんは旧制今市中学(現今市高)を卒業。東照宮で神主となった。その後、陸軍に召集されて見習士官になったが、東京都八王子市で終戦を迎えた。「当時、30人の部下に人の殺し方を教えていた。今度は人助けと思った」という。
資格取得に、宮子さんは「いい年してばかだ」と笑ったという。自宅のバリアフリーを進め、受け入れ準備も進む。「暖かくなったら自宅でゆっくりと、半日ぐらい一緒に過ごせれば」と春を楽しみにしている。(毎日新聞より引用)