新型インフルエンザへの感染が拡大する中、22日まで短期入所と通所介護の休業を要請されている神戸市内などの高齢者施設では、長期化を不安視する声が広がっている。代替措置としてホームヘルパーを派遣する方針だが、ぎりぎりの人員でやりくりする施設もあり、「しわ寄せが独居高齢者や家族に及ぶ」と懸念する声が出ている。
「やむを得ず短期入所を決めた」。社会福祉法人「二人同心会」(神戸市)の東村衛理事長は、家族らに休業を伝えたが、老老介護の家庭から「妻が倒れて」と懇願され、「命にかかわる」と1人の受け入れを決めた。このほかの利用者には、ケアマネジャーが訪問介護を調整しているが、慢性的ヘルパー不足に頭を抱える。約20人のヘルパーで約700人を回っており、「余裕はほとんどないのだが」と訴える。
別の通所介護の担当者も「心配は一人暮らし」。「暑いのでお茶一杯でも飲んでくれれば」と話し、ケアが行き届くか心を砕くばかり。
「長期化すれば要介護者が困り、家族が困り、施設が困る」と話すのは、神戸市老人福祉施設連盟の吉岡正勝理事長。「施設内のまん延が一番怖い」とするが、しわ寄せが家族に及び、施設収益にはね返る負の連鎖を懸念する。吉岡氏は「各施設は冷静に対応しているが、長引けばどうなるか」と不安を隠せない様子。
高齢者福祉が専門の服部万里子・立教大教授は「災害地域指定して公的支援も考える必要がある」と指摘した上で、「当面は命にかかわるサービスに優先順位を付けて調整し、自治体、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどの連携が不可欠だ」と話す。(2009/05/19-05:09)